サ高住で空室対策!賃貸物件からの転用方法と今後の需要やメリット・デメリットを解説

賃貸のアパートやマンションにおいて、永遠の課題は空室問題です。築浅やデザイナーズマンションだとしても、満室を維持するのは、とてもむずかしいものですよね。
空室を清掃やリフォームにより埋める方法以外にも、用途を少し変えて別の角度から満室に近づける方法があります。その方法のひとつがサ高住です。
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そもそも「サ高住」とは?
そもそもサ高住とはなんのことなのでしょうか?
サ高住とは、「サービス付き高齢者向け住宅」の略のことです。主に民間事業者が運営しており、バリアフリーを中心とした賃貸物件でサ付きとも言われています。
そんなサ高住にはどのような人が住んでいるのでしょうか? またどのような設備の工夫やサービスが設けられているのでしょうか?
サ高住の特徴や入居条件、リフォームで欠かせない内容、高齢者向けのサービスについてくわしくみていきましょう。
サ高住の特徴と入居条件
サ高住という名前は、2011年に創設された新しいシステムで、高齢者が住んでいる地域で自分らしく住み続けることを目的としています。
サ高住はサービス付き高齢者向け住宅なので、実質は賃貸物件として考えられます。そのため、契約時には「建物賃貸借契約」となり、普段アパートやマンションを借りるときと同じ契約となりますよ。
近年ではサ高住の需要も増え、供給も増えているので、入居を申し込んでから住むまでに待つ時間も短くなってきました。
サ高住への転用を考えている大家さんは、サ高住にはすべての人が入居できるわけではなく入居条件があるということも押さえておくべきポイントです。
介護を必要としない高齢者向け
サ高住の対象者は、主に60歳以上の高齢者か要介護認定を受けている60歳未満の人を対象にしています。介護を必要としない高齢者向けであり、ひとりで暮らすにはむずかしいという人が入居しています。
ほとんどの場合には、賃貸借契約によって入居しており、一般的に入居を断られることや契約の更新などもないので、安心して長くすむことができるのも特徴のひとつです。
核家族化している現代において、高齢者のひとり暮らしも増えてきており、孤独死なども問題となってきています。自分の両親が高齢者になったことを考えると、やはり周りに誰かいてほしいと願う子供も多く、サ高住の需要は伸びています。
入居にかかる費用
サ高住には、一般的に生活相談員が常駐していて、入居者の安否確認や支援サービスなどお手伝をしています。介護が必要な場合には、外部と連携して介護サービスを受けることが可能なので、個々に応じた対応ができる点でも喜ばれています。
介護が必要ない場合や介護は外部を利用する場合、入居のみの場合にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか? 初期費用としては、礼金や更新料がいらない物件が多くあるので比較的安く抑えることができますね。
一般的には以下のような初期費用が必要となります。
初期費用 | |
項目 | ・敷金 ・前家賃 ・管理費 ・共益費 ・保証料 ・火災保険料 |
オプション | ・鍵交換費用 |
費用 | 家賃の3倍~5倍 |
現在の募集内容を見ていると、敷金が0円の物件もありますし、前家賃がタダになるフリーレント期間中の物件もあるので、初期費用はもっと安くなる可能性がありますよ。
毎月の家賃は、一般的に5万円から10万円程で、サービスや施設が充実している場所では20万円以上する住宅もあります。家賃は介護サービス費用など入っておらず、一般的な賃貸アパートと同じで、家賃と共益費の料金です。
なにかあったときに生活相談員さんがいてくれるという安心感と、一般の賃貸住宅と費用が変わらない(安くなる場合もある)という点からサ高住の人気の秘密が見えていきます。
出典:サービス付き高齢者向け住宅とは?|株式会社ライフル
提供サービスの内容
介護が必要でない一般型と言われるサ高住にも、いろいろなサービスがあります。義務付けられているサービス内容は、
- 生活相談員が必ず駐屯する
- 入居者の安否確認
- 入居者の相談を受ける
というものです。
これ以外に食事も作ってほしいというときには、食べた利用回数分を支払うという方法があり、作れるときには自分の部屋のキッチンで好きなものをつくるという方法もありますよ。
ほかにもオプションとして部屋の定期的な清掃や洗濯などのサービス、在宅の医療サービス、ふたり暮らしも可能である部屋、部屋に緊急通報ボタンや人体感知センサーがついている部屋などもあります。
各サ高住で、サービス内容が異なり、後々必要としていた介護サービスがないなど困ることもあります。
居室の必要面積
サ高住の部屋にはバリアフリー構造であることと、一定の面積や設備が備わっていなければなりません。生活の中心となる居室には次のような規定があります。
「各専用部分の床面積は、原則25㎡以上(ただし、高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する共用の居間・食堂・台所・浴室などがある場合は18㎡以上)」車いすや杖などを使っても安全に移動できるなど考慮されていますね。
そのほかにも各部屋には台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を設置することが決められています。ただ、共用部分に台所や浴室がある場合は上記のとおりではありません。
また、バリアフリーの設備として、段差がない床であることや手すりを設置すること、通行幅を広めに確保することなどが定められています。
出典:サービス付き高齢者向け住宅|一般社団法人高齢者住宅財団
有料老人ホームとの違い
サ高住と有料の住宅型老人ホームは、同じようで多くの面が違います。
サ高住 | 有料老人ホーム | |
対象者 | 介護を必要としない人 | 要介護高齢者 |
居室 | 原則25㎡以上 条件により18㎡以上でもOK |
個室13㎡以上 |
契約 | 建物賃貸借契約 | 終身利用権方式 |
外出 | 自由 | 担当者の許可が必要 |
さまざまな身体介護などが必要となるので、サ高住よりもサービス料がプラスされる分、費用が2倍から3倍ほど高くなります。入居費用においては、補助金なども利用できるので安い場合もありますが、高ければ数千万円する場合もありますよ。
空室対策としてサ高住転用の方法
普通の賃貸アパートとして経営していてもタイミングや周りの物件などにより、どうしても空室がつづく場合があります。そんなときには、需要の多いサ高住への転用を検討してみてください。
転用する際には、以下のような設備のリフォームや間取りの変更、高齢者向けのサービスを活用することが考えられます。サ高住に転用する際には、具体的にどのような変更方法があるのでしょうか。
高齢者向けリフォームの実施
まずは高齢者が住むことを前提として、住みやすい環境を整える必要があります。規定もあるので、規定に沿いながら高齢者がゆったりと住める部屋にリフォーム計画を立てましょう。
こちらの記事では、リフォームについて詳しく解説しています>>【アパート経営に必要なリフォーム費用】7つの項目と注意したい3つのポイント
段差の解消と手すりの設置
一般の賃貸物件、特に古いアパートは段差が多いので、高齢者の転倒のリスクが高くなりますね。基本的には段差のないフラットな居室をつくる必要があり、トイレや洗面所などの段差もなくします。
リスクを軽減する素材、設備の選択
各部屋には高齢者の生活を想定して、さまざまなリスクを考えて対策をおこなわなければなりません。忘れっぽい人もいるので、コンロはガスよりもIHがおすすめです。IHであれば、火の消し忘れによる火災を予防できます。
設備以外にも、床材などの素材にも高齢者向けにこだわってみましょう。普通のフローリングだと滑りやすく転倒の危険があります。そのためノンスリップタイプの床材を使ってみましょう。
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上記のように少しでこぼこがあることで、滑りにくくなるのが特徴です。廊下に使用したり、部屋の中に使用したりと用途に合わせて選択してくださいね。
こだわった部分や高齢者が住みやすい設備などを部屋のアピールポイントとすることで、入居者が集まりやすくなるので、できる範囲でリフォームをしましょう。
間取りや床下幅の変更
サ高住のリフォームを計画する際に、どのような高齢者が住むのかを考えながら進めていきます。要介護者ではないので、歩くことが困難でない人も多いのですが、車いすを利用する人もいます。
そのため、車いすを使って部屋で快適に過ごせるかということを念頭に、部屋の間取りや床の幅などを考えてみましょう。例えば2DKの間取りの部屋でひと部屋が4.5帖や6帖と狭い場合には、壁を壊して広い1LDKに改装すると動きやすくなります。
間取りの変更となると、大幅なリフォームとなるので費用も高額になりますね。しかし、賃貸物件として経営していくのにもリフォームは必要なことなので、その点も踏まえて検討してみてください。
立地や周りの需要を調べて、サ高住のほうが満室になる可能性が高いのであれば、大幅なリフォームをしたとしても利益が上がる可能性があります。
高齢者向けサービスの導入
サ高住に転用するにあたって、リフォームはもちろん必要ですが、生活相談員の配置などサービスを確立しなければなりません。すべてを自分でおこなうというオーナーもいますが、介護の世界にはじめて入る人にとってはとてもむずかしいことですね。
そこでさまざまなサービスを利用して、よりよいサ高住の体勢を整えてみては? どのようなサービスがあるのか、ここでくわしくご紹介していきます。
一括借り上げ
サ高住における一括借り上げとは、不動産などにあるシステムです。サ高住に転用したものの、長期間にわたって安定した収入を確保できるのか心配でたまらないというときのひとつの手立てです。
サ高住としてリフォームをおこなったうえで、ミサワホーム不動産などに一括借り上げをしてもらい、介護・医療の事業者に運営を任せるなど経営全般をおこなってもらいます。空室になった場合も満室時と変わらず収入が得られるメリットがあります。
また年数が経過しても安定して収入を得ることができるので、まめな経営が苦手な大家さんにもおすすめのサービスです。
出典:サービス付き高齢者向け住宅|ミサワホーム不動産株式会社
テナント型
太陽ハウスにはテナント型サービスというサ高住向けのサービスがあります。表面利回り10%を超えている優秀なサービスです。テナント型というのは、介護事業者側がサ高住にテナント(事業所)を設けるので、大家さんにテナント料を払って利用する方法です。
一括借り上げとは違って、すべてを委託するのではなく、テナント料も収入として得ることができますね。太陽ハウスは、大家さんと事業者の仲介に立ってくれる仲介業者の役割をしてくれます。
また不動産業として賃貸借契約を締結する働きもおこなってくれますよ。集客などもサポートしてもらえるので、太陽ハウスと二人三脚で経営をおこなっていくイメージです。
出典:テナント式のご紹介|太陽ハウス株式会社
パッケージプラン
パッケージプランというサービスもあり、グッドデザイン賞を受賞したシノケンウェルネスの寿らいふプランが著名です。サ高住への転用となると、すべての部屋を改装しなければならないと考えがちですが、一部屋からでも対応してくれます。
そのため、もともと入居している部屋はそのまま利用してもらい、空室がある部屋のみサ高住に転用することができるのです。ニーズに応じて、徐々にサ高住の部屋を増やしてもよいですね。
寿らいふプランは、空室の部屋に対して、高齢者向けのサービスとして医療のサポートや食事・暮らしのサポートを付加価値として付けます。敷金礼金0円、保証人不要で入居しやすいのも特徴です。
サービスの具体的な内容は、安否確認サービス、防犯ブザー、24時間対応、緊急や相談の通報、生活支援サービスを受けることができます。
サ高住運用のメリット・デメリット
サ高住のニーズや需要を感じ、運営に踏み出そうか悩んでいる大家さんも多くいらっしゃいます。
メリット1 長期的な需要が見込める
2019年において総務省の統計によると、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は28.1%と発表されました。また70歳以上は5人にひとりに相当し、人口減少と高齢化社会が進んでいることが述べられています。
今後も高齢者の数は増え、割合も多くなっていくことは統計的にも目に見えています。そのため、サ高住への転用・運用は、これから先にわたって需要があるということです。今から転用しても長期的に需要があるので、長く運用していくことが可能です。
出典:高齢者の人口|総務省統計局
メリット2 入居需要が駅近に限らない
一般的な賃貸アパートやマンションは、駅が近い・バス停が近いなど、利便性が高い場所のほうが人気です。しかし、サ高住は高齢者が多く住むので、毎日電車に乗って移動する人が若い人に比べて少ないです。
また、サ高住にはサービスも充実しているので、食事に出かけたり医薬品を買いに行ったりなど出かける回数も少ない傾向にあります。そのため、サ高住の場所が駅近でなくても、需要があります。
メリット3 補助金・助成金が受けられる
国土交通省が発行した「平成30年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業について」によると、サ高住に改修した場合にも補助金を受けることができます。新築で建築する場合にも補助金や助成金を受けることができますよ。
例えば、改修の場合には建築費の3分の1を国が直接補助してくれます。一戸あたり100万円が上限とされていますが、かなりの割合で補助してくれるのです。
ほかには、所得税や法人税、固定資産税、不動産取得税など経営においてかかる費用が優遇されます。当初5年間は固定資産税の税額の3分の2を減額するなど、こちらも大きな割合での減額となりますね。
さらに、サ高住に対する融資については独立行政法人住宅金融支援機構の要件が緩和され、融資が受けやすくなります。それぞれ条件もありますが、クリアすることで補助金や助成金を受けることが可能です。
出典:サービス付き高齢者向け住宅|国土交通省
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デメリット1 サービスのコストが掛かる
サ高住に転用するデメリットとして、ひとつはサービスを充実させるとその分運用コストが膨らむということです。ただし、サービスを充実させることは入居者が安心して暮らせることに結びつき、長期的に安定して経営ができることになります。
リフォームやサービスに費用がかかりますが、長い目でみれば、一般的なアパート経営よりも利益が増えることが考えられるのです。
デメリット2 高齢者を入居させるリスク
サ高住に転用するということは、高齢者が多く住むということです。そのため、一般的な賃貸住宅よりも、孤独死や、ケガや事故のトラブルが起こりやすくなります。
サービスを充実させることで、孤独死における見取りやケガの治療などを事業者にお願いすることが可能です。生きるということを身近に感じるようになります。
まとめ
賃貸住宅の空室が問題視されている今、サ高住に転用する考えを持つのはとても大切なことです。今後の人口の割合からみても、サ高住は、長期的に需要があります。