アパート経営の礼金敷金は2か月?キャッシュフローと◯◯で相場決め!今さら聞けない基礎知識

「礼金とは大家にお礼として渡すお金」
間違った情報ではありませんが、あなたが大家という立場なら、礼金はまた違ったとらえかたをしなければいけません。
不動産会社に入居募集を依頼すると、「大体このくらいが相場ですね~」と敷金と礼金、更新料などがなんとなく決定しがち。
なかには、礼金をもとに広告料や仲介手数料をもらおうとする目先の利益しかみていない仲介業者もあります。
アパート経営の礼金や敷金は、大家にとって非常に大事なお金。世間の考えにまどわされることなく、自分自身で合理的に部屋の礼金・敷金を決めましょう!
今回「あぱたい」では、アパート経営の礼金・敷金は2か月を前提にすべきである理由を解説!
北海道、東京、大阪の地域特性も考察して、敷金礼金なしで契約するワンルームやマンション、アパートが多いなか、なぜ敷金礼金2か月の賃貸物件を前提にすべきなのか多角的にご説明します。
ぜひ最後までご覧になってみてください。きっと、敷金礼金なしを前提にした考えかたが間違っていると気づくはずです。
敷金礼金ゼロの常識をチョッキンするカニ
記事の目次はこちらをクリック
アパート経営は「敷金・礼金あり」を前提としよう!
アパート経営における敷金と礼金、実は最近まで法的な定義づけがされていませんでした。2020年4月に改正される民法で、ようやく敷金の定義を明記されるというのが現状です。
【敷金の定義】
第六百二十二条の二 (中略)いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。
引用:法務省 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
上記に対して礼金は、定義が相変わらず明確ではなく「謝礼金」のような扱い。よってアパート経営における敷金礼金とは、「昔からそう決まってる」というイメージがまだまだ強いのです。
では「入居者」と「大家」という立場の違いで、敷金と礼金について考えてみましょう。
入居者 | 敷金 | なにごともなければ退去のときに返ってくるお金 |
礼金 | 家を借りるときに払うよくわからないお金 | |
大家 | 敷金 | 家賃滞納や修繕のため事前に受け取っておく担保 |
礼金 | 家賃とは別に得られる貴重な収入源 |
入居者にとって礼金は「費用」、大家にとって「収入」です。一方で敷金は、入居者にとって「一時的に預けるお金」ですが、大家に取って「いざというときの担保」。
敷金と礼金は入居者にとっては単なる負担ですが、大家にとってリスク回避や損失の穴埋めといった意義あるお金なのです。
あなたが大家なら最初から敷金礼金ゼロを考えるのではなく、「敷金も礼金もいただくもの」という前提で考えたほうがよいでしょう。
タシカニ! つい入居者目線に寄りすぎちゃうカニ
敷金もれ金も意味あるお金だから受け取っておきタイね
アパート経営で礼金をゼロで考えてはいけない理由
税制面からみた敷金と礼金は、以下のどちらになるかで課税、非課税の判断がわかれます。
礼金 | 敷金 | |
所得税法 | 課税 | 場合による |
消費税法 | 非課税 | 場合による |
- 所得税:受け取った金銭が預り金か収入か
- 消費税:受け取った金銭が役務の提供にあたるかどうか
税法上の礼金は、家賃収入の一部。よって礼金は所得税では課税対象、消費税法では非課税とされています。
対する敷金の扱いは少し複雑。所得税法、消費税法ともに「返金するなら非課税、返金しないなら課税対象」と決まっています。
理由は会計上における仕訳に違いがあるため。つまり敷金は「返金しないなら収入」と判断されるのです。
たとえば敷金で部屋の修繕費用をまかなったとします。しかし一度自分の懐に入った敷金は、所得税法上の収入として仕訳けるのが通常の考えかたです。なお消費税法では、役務の提供に該当します。
契約書の内容によっても課税、非課税が変わるみタイ
最初から返金しない特約があるなら収入になるカニ
敷金と礼金の有無でなにがどう違ってくるか
礼金 敷金 あり |
礼金なし 敷金あり |
礼金あり 敷金なし |
礼金 敷金 なし |
|
空室対策の効果 | 低い | やや高い | やや低い | 高い |
収益性 | 高い | 普通 | 普通 | 低い |
納税額 | 高くなる可能性 | 安くなる可能性 | 高くなる | 安くなる |
オーナーの負担 | 低くなる | 普通 | 普通 | 高くなる |
アパート経営で最初に考えるべきは「収益性」「オーナーの負担」です。
すると「礼金・敷金あり」を前提にするのが、もっとも合理的な考えかた。そのうえで空室対策を優先するのか、少しでも節税する必要があるのかといった状況により、敷金や礼金の設定を考えるべきなのです。
【北海道、東京、大阪】地域で違うアパート経営の礼金・敷金
「公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会」では、定期的に敷金礼金の平均月数データを公表しています。
エリアによって敷金礼金の平均月数が違うのはグラフのとおり。それよりも、どのエリアであっても必ず「敷金礼金は1か月」に設定している事実が重要です。
また以下のようなデータもあります。
礼金に比べて、敷金は必ず設定している大家が多いとわかります。
特徴的なのが更新料。もはや更新料という文化は、関東エリアならではと言っても過言ではない違いです。
敷金や礼金の扱いがエリアによって異なるのは、各エリアにおける商習慣の違いとも言われています。
- 北海道:礼金や更新料という意識や習慣がない
- 東京:敷金・礼金・更新料などの文化がもっとも浸透している
- 大阪:敷金とは別に「敷引き」という費用が存在する
※あくまで一般論であり、時代の移り変わりや該当エリアの賃貸需要によって必ずしも上記のとおりとは限りません。
北海道の札幌においては賃貸の激戦区だから、文化というより空室対策のために礼金や敷金ゼロが多いのだとか
関西エリアにおける敷引きも独特の文化。敷金から返金しないお金を特約として定める習慣カニ
敷金礼金ゼロという物件はたしかに増えました。しかし敷金礼金ゼロは「空室を埋めるための手段」でしかなく、賃貸業界全体が敷金礼金ゼロを推奨しているわけではありません。
空室が埋まらない物件が敷金礼金ゼロを謳っているだけ。
敷金礼金2か月でも入居者が決まる物件は人気物件ですから、インターネット上にも出てきません。
つまりうまく運営できているアパート経営なら、敷金礼金を2か月ずつ設定しても空室は埋まります。
あらためて申し上げますが、アパート経営は決して敷金礼金ゼロが当たり前の時代ということはないのです。
アパート経営の敷金礼金は何か月が相場?キャッシュフローと賃貸ニーズで決めよう!
敷金と礼金に相場は存在しません。しかし敷金は2か月がベストでしょう。理由は、大家にとっての敷金と礼金の役割に関係します。
敷金 | 家賃滞納や修繕のため事前に受け取っておきたい担保 |
礼金 | 家賃とは別に得られる貴重な収入源 |
敷金は返金するのが基本ですが、主に以下のようなケースだと敷金は返金しません。
- 家賃の滞納が発生した場合
- 部屋の修繕が発生した場合
家賃滞納は「滞納3か月目から法的手段を取る」のが一般的なため、敷金は2か月がベスト。
部屋の修繕は修繕箇所や劣化、破損具合によってまったく違います。ただ、よほど劣化が進んでいなければ壁紙や床の張替えで完了するケースがほとんど。普通の修繕なら家賃1~2か月分くらいが相場と言われています。
敷金を決める際は、こちらの記事もご参考になさってください。修繕やハウスクリーニングの費用目安が詳しくわかります! >>アパート経営の管理費【超具体的な相場紹介】7大費用見直しで損しない共益費を計算
また礼金は、単にボーナス的な考えかたで安易に決めないようにしましょう。合理的に考えるなら、空室による損失の補填という役割を持たせるのがベストです。
画像引用:一般社団法人 日本ホームステージング協会 ホームステージング白書
上図は、ホームステージングにより空室期間がどう変わるかという調査目的。空室期間を調べるという趣旨ではありませんが、約160件の賃貸物件における平均的な空室期間が約90日(3か月)という結果が出ています。
しかしアパート経営で礼金を3か月と設定しては、入居募集で明らかに不利。そこで礼金2か月と設定しつつ、募集から1か月以内の入居なら礼金1か月ダウンなどの特典をつけるなどの工夫をしてみましょう。
もちろん、空室期間の損失をどれだけ許容できるかにもよります。ただ最初は大家の希望で設定し、入居募集の状況に応じて随時変更していくというのが柔軟な入居募集の方法です。
アパート経営の「敷金礼金あり」はトラブルの防止に必要な保険!?
アパート経営における敷金と礼金は、2か月と設定して入居募集するのが最初のスタートとしておすすめ。
アパート経営をするなら空室や家賃滞納、老朽化による修繕から入居者の問題行動など、あらゆるトラブルを想定しなければいけません。 アパート経営の合理性に偏りすぎて、入居者目線を忘れてしまえば空室はいつまで経っても解消されないでしょう。 合理的なアパート経営 > 賃貸ニーズにあわせた柔軟な対応 上記のように考えるのが、ブレないアパート経営のコツ。 家賃滞納や修繕、空室による損失を考えると、敷金礼金2か月の設定がベストでしょう。 そして、敷金と礼金は「そのアパート経営にどのくらいの価値があるか」で決めるのが正しい考えかた。今回ご紹介した敷金と礼金はひとつの考えかたであり、あなたにとってのヒントになるでしょう。 敷金と礼金をなんとなく決めるのではなく、ぜひアパート経営におけるひとつの戦略として考えてみてください。
まとめ