名義で変わるアパート経営のメリット!妻名義が1番?親・子供と比較シミュレーション付き

アパートを購入する場合に建物の名義を誰にすればいいのかと悩むケースはよくあります。建物の名義は所得税や相続税に関係するため、アパート経営の収支にも大きく影響する大事なポイントですね。
今回は「あぱたい」が、名義によって変わるアパート経営のメリットデメリットを詳しく解説します。
アパートの名義をあなた自身にした場合、親の土地に子名義でアパートを建てた場合、アパートの名義を妻にした場合でケース別にメリットデメリットをみていきましょう。
アパート経営の名義をきめるふたつのポイント
原則としてアパートの名義人は、アパートを購入する際に費用を負担した人。親子など複数で費用負担をしたなら、その負担割合によって持分を決めます。
気をつけたいのは、費用の負担割合と持分割合が異なるときに発生する贈与税です。例えば親が全額費用負担して購入したアパートを子の名義にすると、親から子への贈与とみなされて贈与税がかかります。
上記の例を踏まえてアパートの名義を決めるときに大事なるのは次のふたつのポイントです。
1.アパートの名義は購入する前にきめるべき
アパートを購入後に名義変更をすると、贈与税だけでなく不動産取得税、登録免許税がかかります。また手続きも煩雑になるためいいことはありません。アパートの名義は購入する前に決めましょう。
2.アパート経営の目的や経営方針によって誰を名義にすべきかが異なる
アパートを本人以外の名義にすることのメリットは、所得の分散や相続税対策です。また本人が勤めている会社で副業が禁止されている場合に妻名義にしてアパート経営をする場合もあります。
名義を誰にするかでかかってくる税金は大きく変わります。アパート経営の目的や経営方針など現状をよく整理して、名義になる人をきめましょう。
【自分名義】でアパート経営するプラス面とマイナス面
アパートの名義を自分本人にする場合のマイナス面は、所得も相続も自分ひとりに集中するため税率が高くなること。
反面、自分本人名義のアパートだと相続税の減税をフルに使えたり、名義が単独のため手続きなどが容易であったりというプラス面があります。
「所得税」の面で自分名義のアパート経営はマイナス
自分名義のアパート経営は所得税が大幅に増えるのがマイナス面。自分名義のアパート経営と会社からの給与などの合算で所得が上がり、所得税額が大幅にアップするのです。
所得税は、所得額が上がれば税率も上がる累進課税。特に900万円を超えると33%という高い割合になるため、所得の分散が必要になってきます。
会社員など本業のあるオーナーは注意が必要ですね。
「相続税目的」なら自分名義のアパート経営はプラス
一方プラス面は、配偶者や子供にアパートを相続する際に相続税の節税ができることです。
例えば現金1億円を相続すれば相続税は1億円に対してかかってきます。しかし1億円のアパートを購入すると、土地建物の評価額は現金より安くなるため相続税が安くなるのです。
さらに、アパートを経営していることで「小規模住宅用地の特例による減額」や「借地権・借家権割合による減額」も適用できます。
小規模宅地の特例 | 貸付事業用宅地として200㎡まで相続税評価額が50%減 |
借地権、借家権割合の特例 | 土地:評価額×(1-借地権割合×借家権割合) 建物:評価額×(1-借家権割合) |
自分名義でするアパート経営のシミュレーション
自分名義でアパートを建てた場合、小規模宅地の特例や借地権・借家権割合の特例を使用できるため、相続税をかなり抑えられます。
実際に自分名義でアパート経営する場合の相続税をシミュレーションしてみましょう。
《現金1億円の相続税》 相続財産1億円×相続税率30%-控除額700万円=2300万円
《1億円でアパートを購入した場合の相続税》 ※相続税評価額と借地・借家権の割合は一般論として仮で設定しています 「時価5000万円・面積400㎡とした場合の土地評価額」 時価5000万円×80%=4000万円 4000万円 - (4000万円 × 40% × 30% × 100%) = 3520万円 3520万円 - (1760万円 × 50%) = 2640万円…A(土地の相続税評価額) 「時価5000万円・延べ床面積400㎡とした場合の建物評価額」 時価5000万円 × 60% = 3000万円 3000万円 - (3000万円 × 30% × 100%) = 2100万円…B(建物の相続税評価額) 「最終的な相続税の計算」 A + B = 4740万円 4740万円 × 相続税率20% - 控除額200万円 = 748万円
相続税は小規模宅地の特例や借地権、借家権割合の特例などが使えるため、現金に比べると3分の1程度となりかなりの節税になります。相続税の節税が目的であれば、自分名義にするとよいでしょう。
【親・子の名義】でアパート経営するプラス面とマイナス面
アパート本体の名義は自分だけれど、土地の名義は親というパターンは少なくありません。
この章では「土地は親名義・建物は子名義」を想定したプラス面とマイナス面を解説します。
「将来的な相続税の納税」で親・子名義のアパート経営はプラス
親名義の土地でアパート経営するケースのプラス面は、子世帯が少ない負担でアパート経営をはじめられる点。またアパートの収入が、親から子へ相続をするときの相続税の納税対策にもなるのもメリットのひとつです。
親世帯が多く資産を持っている場合、子世帯は多額の相続税を課されることになります。相続するものが現金なら相続税を払えますが、財産が不動産だけで相続税が高ければ不動産を売却して納税資金をつくらなければいけません。
親の生前から子世帯がアパート経営の収入を得ていれば、その収入を相続後の納税資金に充てることが可能なのです。
「相続税の減税」で親・子名義のアパート経営はマイナス
一方マイナス面としては、親の土地を子が使用貸借していると貸付事業用宅地とならず小規模宅地の特例や相続時の借地権、借家権割合による減税ができない点。土地は相続時に更地評価となるため、相続税は高くなります。
そして親がアパート経営をしないため相続時に債務控除が受けられないのもマイナス面です。
債務控除とは、アパートローンの残債を相続財産から差し引くことであり、相続税対策のひとつ。ただ債務控除はタイミングがあわなければ有効な相続税対策にはならないため、マイナス面としては小さいと言えます。
親・子の名義でするアパート経営のシミュレーション
親名義の土地にアパートを建てるなら、建物は自分名義のため建物の相続を気にする必要はありません。ただ借地権、借家権割合による減税ができなくなり土地は更地評価となります。
自分名義のシミュレーションと比較しつつ、親名義の土地でアパート経営する場合のシミュレーションをしてみましょう。
《自分名義のアパートが建つ土地の相続税》 「時価5000万円・面積400㎡とした場合の土地評価額」 時価5000万円×80%=4000万円 4000万円-(4000万円×40%×30%×100%)=3520万円 3520万円-(1760万円×50%)=2640万円(相続税額)
《子名義のアパートが建つ土地の相続税》 「時価5000万円・面積400㎡とした場合の土地評価額」 時価5000万円×80%=4000万円(相続税額)
貸付事業用宅地とならないため、相続税額は減税とならず子世帯の負担は大きくなります。ただし子世帯はアパートを経営しているため、こういった相続税の納税資金も貯めることが可能。親が資産家で子世帯の収入が少ない場合に有効な手段です。
【妻の名義】でアパート経営するプラス面とマイナス面
では最後にアパートの名義を妻にするケースを見てみましょう。アパート経営において配偶者の関わる減税措置は多くないため、親と子の関係に比べてプラス面とマイナス面は比較的わかりやすいと言えます。
「所得税」の面で妻名義のアパート経営はプラス
プラス面は、夫本人が公務員など副業を禁止されている場合でもアパート経営ができること。
また、夫婦で所得の分散ができるのもプラス面です。自分が会社員だとすると、アパート経営による収入で所得額が上がって所得税がアップしてしまいます。そのため所得が少ない、あるいは無職の妻の名義にして所得の分散をすれば所得税を減らせるのです。
「扶養控除を使えなくなる」のが妻名義のアパート経営でマイナス
ただし妻がアパート経営をはじめると妻自身の所得が増えて扶養から外れます。つまり扶養控除がなくなる大きなマイナス面があるのです。扶養控除はメリットとして大きいため、妻の所得額には十分注意しましょう。
また税金対策のためにアパートの名義を妻にしたが離婚してしまい、財産分与で揉めるケースもあります。親・子と違い、夫婦は離婚の可能性を想定しておくことも大切です。
もし妻の名義にしてもメリットが少ないなら、夫婦ふたりの共有名義にすることも検討してみましょう。共有名義のメリットは、青色申告特別控除が夫婦とも受けられること。青色申告特別控除を受けるには、アパートが10室以上であることが条件です。
妻の名義でするアパート経営のシミュレーション
アパートを妻の名義とした場合、所得の分散で所得税を抑えられます。以下をモデルケースとして、自分名義の場合と妻名義の場合のアパート経営をシミュレーションしてみましょう。
- 自分の収入500万円
- 家賃収入500万円
- 妻の収入0円
《自分の名義でアパート経営する場合》 年間所得1000万円 × 33% - 所得控除153.6万円 = 176.4万円(所得税)
《妻の名義でアパート経営する場合》 自分の所得税額:給与所得500万円 × 20% - 所得控除42.75万円 = 57.25万円 妻の所得税額:家賃収入500万円 - 所得控除42.75万円 = 57.25万円 57.25万円 + 57.25万円 = 114.5万円(所得税)
妻の名義にすることで、所得税を30%以上減らせました。ただし、妻の扶養控除がはずれてしまうなどのマイナス面もあります。扶養内の収入になるように持分をわけるなどの方法も検討してみましょう。
名義で変わるアパート経営のメリットデメリット一覧
所有時 | 相続時 | |
本人名義のアパート | メリット:名義が単独のためローンや登記など手続きが容易 デメリット:所得が集中するため所得税が高額になる |
メリット:貸付事業用宅地の特例や借地権借家権の特例が適用できる デメリット:不動産での相続は子が納税資金を用意できない可能性もある |
親・子名義のアパート | メリット:子が少ない資金でアパート経営を開始できる デメリット:特になし |
メリット:建物の相続が不要になる デメリット:土地を使用貸借しているため土地は更地評価となり相続税が高い |
妻名義のアパート | メリット:所得の分散ができ所得税の節税ができる デメリット:妻が扶養から外れる可能性あり |
メリット:建物の相続が不要になる デメリット:万が一離婚してしまうと財産分与や相続時にもめるケースも |
まとめ
アパート経営を計画する際に建物の名義を誰にするかは大事なポイントです。あなた自身の家族構成や相続対策の必要性によって誰を名義にするかをきめるといいでしょう。
購入後に名義を変更すると、手続きが煩雑になるばかりか余計な税金がかかってしまいます。アパートの名義は必ず購入前にきめておきましょう。