アパート経営費用は?【建築費やネット導入~税理士費用など8項目】自己資金の頭金相場は?

アパート経営をはじめる前に一番気になるのが、アパート経営に必要な費用です。
「たくさんお金がかかるのかなあ」と不安を抱え、なかなか行動に移せない人はたくさんいます。
今回「あぱたい」が、土地購入費・建築費用・税金・自己資金の4つを中心に、アパート経営に必要な費用の全貌をおみせします。
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アパート経営にはいくら費用がかかるの?
まずは、アパート経営にどんな費用が発生するのかを知っておきましょう。また、それぞれの金額についても詳しく解説していきます。
【アパート経営に必要な主な初期費用】
- 土地購入費
- 建築費用
- 税金
- 諸経費
【そのほかの主な費用】
- インターネット導入費用
- 税理士費用
- 管理会社費用
- 法人化費用
土地購入費
アパート経営は、土地の有無で資金計画が大きく変わります。
相続などですでに土地を持っている場合、土地購入費は必要ありませんが、土地がなければ当然土地購入費が必要です。
土地がある場合のメリットは「土地購入費がかからない」ということにつきます。利回りも土地なしに比べて、かなりの高利回りが期待できるでしょう。
その代わり、立地条件を自由に選ぶことができません。駅から遠いなど、もしかするとアパート経営には不向きな土地の可能性もあります。ぜひ慎重に検討してください。
アパート建築に必要な広さは、部屋数などによって変わります。木造2階建ワンルーム8戸の場合、必要な土地の広さは約50〜70坪。
今回は2019年4月分レインズ(不動産流通機構)の実勢価格をもとに、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉県)の土地価格を比較してみました。
【首都圏:60坪(198㎡)の場合】
地域 | 金額 |
東京都 | ㎡単価34.75万円 × 198㎡ = 68,805,000円 |
神奈川県 | ㎡単価16.54万円 × 198㎡ = 32,749,200円 |
埼玉県 | ㎡単価13.38万円 × 198㎡ = 26,492,400円 |
千葉県 | ㎡単価 9.37万円 × 198㎡ = 18,552,600円 |
参考:不動産流通機構 月齢速報 2019年8月版 都道府県別概況
東京が飛び抜けて高いのは予想どおりですが、県ごとにかなりばらつきがあるのがわかりますね。
建築費用
土地と同じように高額な費用が発生するのが、アパートの建築費用です。アパートの建築費用は、構造体・間取り・使用建材などの条件によって大きく違いが出ます。
またそういった条件以上に、建築会社による違いが非常に大きいため、徹底的な比較検討が必要です。
建築費用については、のちほど詳しく解説します。
税金
アパートを購入(建築)すると必ず発生するのが税金。なかには軽減措置される税金もありますので、適用基準をぜひ知っておいてください。
項目 | 内容 |
★印紙税 | 1,000万円超〜5,000万円以下:2万円
5,000万円超〜1億円以下:6万円 |
★登録免許税 | 購入による移転登記:課税標準額×2%
贈与による移転登記:課税標準額×2% 相続による移転登記:課税標準額×0.4% 保存登記:課税標準額×0.4% 抵当権設定登記:課税標準額×0.4% |
★不動産取得税 | 固定資産税評価額×4% |
★固定資産税 | 課税標準×1.4% |
★都市計画税 | 課税標準×0.3% |
消費税 | 条件に合えば還付制度あり |
★:軽減措置あり
必要な税金と軽減措置についてはこちら>>アパート経営に必要な初期費用|頭金・諸経費・自己資金について詳しく解説!
諸経費
アパートを取得すると、税金だけでなく諸経費も必ず発生します。建築費用と比べると金額が小さいのでつい軽視しがちですが、まとまるとバカにならない金額です。しっかりと把握しておきましょう。
項目 | 内容 |
仲介手数料 | 400万円以上:売買価格×3%+6万円+消費税 |
設計料 | 会社によって違う。建築費の3%が目安 |
住宅ローン保証料 | 20年1,000万円借り入れ:148,340円
(きらぼし銀行の場合) |
住宅ローン事務手数料 | 54,000円(きらぼし銀行の場合) |
司法書士報酬 | 5〜10万円 |
火災保険料(地震保険料) | 木造15〜50万円。構造体・場所・補償範囲などで変動 |
諸経費も内容によって金額が大きく違いますので、よく比較検討してください。
諸経費についてはこちら>>アパート経営に必要な初期費用|頭金・諸経費・自己資金について詳しく解説!
必ず押さえておきたい建築費用の基礎知識とは
ここまでアパート経営にかかる4つの大きな費用についてみてきました。ここでは資金計画のなかで金額がもっとも大きい「建築費用」について詳しく解説します。
そもそも知ってる?アパートとマンションの違い
あなたはアパートとマンションの違いを知っていますか?
じつは、アパートとマンションの違いを定める明確な法的根拠はありません。業者側で、勝手に区別して呼んでいるに過ぎないのです。しかし、業者も好き勝手に分類しているわけではありません。
それでは、一般的にアパートとマンションを区別するポイントは、どこにあるのでしょうか。
【アパートとマンションの違い】
項目 | アパート | マンション |
構造体 | 木造
軽量鉄骨造 |
RC:鉄筋コンクリート造
SRC:鉄筋鉄骨コンクリート造 ALC:軽量気泡コンクリート板鉄骨造 |
構造体の特性 | 建築費用が安い
通気性がよい 耐火性・耐震性・遮音性は劣る |
建築費用は高め
耐火性・耐震性・遮音性にすぐれる |
設備面の違い | 2〜3階建まで
エレベーターなし |
階数に制限なし
エレベーターあり |
上表のとおり、アパートの構造体で区別するのが一般的です。ですから
- アパート:木造・軽量鉄骨造(2〜3階建)
- マンション:RC・SRC・ALC(階数制限なし)
と考えておけば間違いないでしょう。
アパートの価格は「構造体と坪単価」で決まる
通常、アパートの建築費用は坪単価で表します。なかには㎡単価を基準にしている場合がありますが、その際は1坪=3.3㎡で換算すれば大丈夫です。
【アパート建築費用計算式】
アパート建築費用 = 坪単価 × 延べ床面積 |
先ほど構造体の説明をしましたが、なぜ構造体の違いが重要かというと、構造体によって坪単価が違うからなのです。
構造体の強度は、下記のように木造から順に高くなっていきます。
木造 < 軽量鉄骨 < RC |
木造アパートの坪単価は56万円
一般的に木造アパートの坪単価は、40〜60万円といわれています。
今回、総務省が発表している「2018年住宅着工統計」のデータをもとに計算した結果も「約56万円」でした。ですから、木造アパートの坪単価は50万円前後と考えておけば、大きく外れることはないでしょう。
木造2階建延べ床面積50坪の場合、建築費用は約2,800万円です。(56万円で計算)
3階建アパートは、構造計算の煩雑さや耐火性の問題で坪単価10万円ほど高くなり、おおよそ3,300万円に。
のちほど鉄骨造アパートも計算しますが、やはり木造が一番安いので、木造アパートの人気は根強いものがあります。
鉄骨造アパートの坪単価は76万円
軽量鉄骨造はおおよそ50〜80万円が相場といわれています。前述の2018年住宅着工統計データで計算すると、坪単価は約76万円。
延べ床面積70坪の木造と鉄骨造を比べると、「木造3,920万円」「鉄骨造5,320万円」となり、差額は1,400万円にものぼります。
また、建物は税務上、構造体によって法定耐用年数が定められています
木造 | 22年 |
鉄骨造(厚み3mm以下) | 19年 |
鉄骨造(厚み3mm超〜4mm以下) | 25年 |
鉄骨造(厚み4mm超) | 34年 |
厚みが3mm超の鉄骨を使用すれば、耐用年数が木造よりも多くなりますから、鉄骨を選びたくなるでしょう。
建築費用に地域差はあるの
ここまででおおよその建築費用はわかりました。しかし、先ほどの金額はあくまでも全国平均のデータを用いたもの。やはり、建築費用に地域差があるのかどうかは気になりますよね。
そこで、三大都市圏を中心に全国の坪単価をまとめました。
地域 | 木造坪単価 | 鉄骨造坪単価 |
東京都 | 66万円 | 93.7万円 |
千葉県 | 60.6万円 | 74.4万円 |
宮城県 | 57.9万円 | 75.9万円 |
愛知県 | 53.0万円 | 69.9万円 |
大阪府 | 50.9万円 | 71.0万円 |
福岡県 | 49.5万円 | 67.2万円 |
参考:総務省統計局 34 (新築住宅)利用関係別、構造別、建て方別(住宅の工事費)/戸数、床面積、工事費予定額、1戸あたり工事費予定額、1平米あたり工事費予定額
東京は特別として、東西関係なく極端な地域差はみられません。土地購入費と違い、建築費用はほぼ全国共通と考えていいでしょう。
ちょっと待って!その見積もりに諸経費は含まれていますか
建築費用を払えばアパートは建つと思ってしまいがちですが、「付帯工事」の存在を忘れるとあとからたいへんなことになります。
じつは前述の建築費用(坪単価×延べ床面積)は「本体工事」と呼ばれるもので、それ以外に必要な諸経費(付帯工事)は一切含まれていません。
付帯工事費は工事費用全体の20%も占めるといわれています。どんな工事があるのか、しっかりと押さえておきましょう。
【別途費用が発生する主な付帯工事】
- 電気・ガス・水道の外部工事
外部から宅内への引き込み・接続工事 |
- 外構工事
駐車場や植栽、門扉や塀などの工事 |
- 地盤整備改良工事
地盤が軟弱でそのままでは建築できない場合の地盤補強工事 |
- 仮設工事
工事のためにつかう電気・水道工事、外壁部の足場設置工事、現場事務所設置 |
- オプション工事
ドアホン・宅配ボックス・Wi-Fiインターネット・防犯カメラなどの設置 |
もう悩まない!賢い資金計画の立てかたとは
アパート経営に必要な費用がわかったところで、次は実際に費用を準備しなくてはなりません。なんといっても、アパート経営において資金計画は命です。きちんとポイントを押さえて計画を立てましょう。
ここでは下記の3点について解説します。
- 頭金の金額
- ローンの種類
- 金利の選択
資金計画についてはこちら>>アパート経営ノウハウ【宅建士が暴露】資金計画から5段階で基礎から具体的方法まで
頭金ってどのくらい必要
結論からいえば、頭金の額に決まりはありません。あとで説明するフルローンのように、頭金なしで借りられるローンもあります。
しかし、一応の目安として、購入金額の10〜20%ほどは自己資金を用意したいところです。
2018年に起きたスルガ銀行不正融資の影響で、不動産投資への融資が非常に厳しくなりました。なかには30%の頭金を融資条件とする金融機関もあるくらいです。
よく考えてみると、頭金が多いほど融資審査がとおりやすいですし、返済計画も楽になります。これからは「30%を頭金にする」と考えておいたほうがよいかもしれませんね。
頭金についてはこちら>>アパート経営に必要な初期費用|頭金・諸経費・自己資金について詳しく解説!
フルローンとオーバーローンの違いとは
先ほど頭金の話をしましたが、残り70〜90%の支払いは、アパートローンを利用するのが一般的です。
しかし、頭金なしで借り入れ可能な「フルローン・オーバーローン」という選択肢も頭に入れておくべきでしょう。
どちらも頭金なしで利用できるローンですが、下記の違いがあります。
- フルローン:購入金額100%を借り入れ可能
- オーバーローン:購入金額100%+諸費用(税金・仲介手数料など)の借り入れが可能
頭金なしと聞くと、フルローン・オーバーローンに飛びついてしまいそうですね。でも、もちろんメリットばかりではありません。
などのデメリットもあるのです。
自己資金なしで素早く資産形成を築くためには、フルローン・オーバーローンは非常に有効です。しかし「自己資金がないから全額借りちゃおう」という安易な利用は、絶対にやめましょう。
フルローンとオーバーローンについてはこちら>>アパート経営でオーバーローンフルローンで不動産投資は危険?失敗しない3つのポイント!
どちらがいいの?変動金利と固定金利
変動金利と固定金利のどちらがいいのかは、ローンを借りる際によく議論になることです。
借入金6,000万円・元利均等返済20年払いという条件で、金利の差によりどのくらい支払い額が違うのかをシミュレートしました。
①変動金利:10年間2.4% → 残り10年間3.1%固定金利に変更
支払い回数 | 元金 | 利息 | 総額 |
240回 | 60,000,000円 | 16,898,670円 | 76,898,670円 |
②固定金利:20年間3.1%
支払い回数 | 元金 | 利息 | 総額 |
240回 | 60,000,000円 | 20,584,681円 | 80,584,681円 |
①10年後に変動金利から固定金利へ切り替えたとしても、②固定金利をつづけるより約369万円も支払い総額を抑えられるという結果に。
いろいろな考えかたがありますが、現在の低金利を考えると、変動金利のメリットは大きいといえます。
そのほかにかかる主な費用は?
ここまで土地購入費・建築費用・税金・諸経費について詳しく解説してきました。しかし、実際にアパート経営をおこなうためには、これだけでは足りません。
最後に、アパート経営円滑化に欠かせない下記の費用について解説します。
- インターネット導入費用
- 税理士費用
- 管理会社費用
- 法人化費用
インターネット導入費用
毎年おこなわれる全国賃貸住宅新聞社「入居者に人気の設備ランキング」で、4年連続不動の1位をキープしているのが「インターネット無料」です。
もはや無料のインターネット接続環境がないアパートは、入居者に選ばれないといっても過言ではありません。
しかも、ただのインターネット環境だけではもはや時代遅れです。今やテレビやラジオではなく、インターネットを利用してスマホやタブレットで情報を得るのが当たり前。
自宅にいるときもデータ容量を気にせずに利用できる「Wi-Fiインターネット」の導入が、これからのアパート経営には不可欠なのです。
気になる導入費用ですが、無線ルーターで有名な「BUFFALO(バッファロー)」の場合、5〜8戸で初期費用約20万円 / 月額11,000円ほどかかります。
初期費用も含め、毎月11,000円のランニングコストが、費用効果として適切かどうかはよく検討するべきですね。
なるべく費用をかけたくないのであれば、初期費用が0円、月額5,000円台〜というプランが可能な格安Wi-Fiインターネット設備会社もあります。
画像引用:アイネット
無料Wi-Fiインターネットについてはこちら>>アパート経営に無料Wi-Fiインターネット【大家の感想付】宅建士が5つのポイントを解説
税理士費用
アパート経営をおこなえば、帳簿作成・確定申告など、日々の会計処理は絶対に発生します。費用の関係上、すべて自分でおこなっている人も少なくありません。
しかし、税理士に依頼すれば税金対策や法改正などの相談ができますから、単なる実務委任以上の大きなメリットがあります。
費用はどこまで依頼するのかにもよりますが、毎月の顧問料が2〜3万円、確定申告代行費用として5〜20万円程度見積もっておけば大丈夫でしょう。
会計知識がある人なら普段の帳簿づけは自分でやり、簡単な相談と確定申告だけを依頼すれば費用は抑えられます。
管理会社費用
アパートの管理は、大家の自主管理という方法もあります。
しかしアパートの清掃程度ならともかく、毎月の入出金管理・入退去者の受付・入居者募集・クレーム対応など、すべてに対応していたらあまりにもたいへんです。
特に時間のないサラリーマン大家は、絶対に管理会社を利用すべきでしょう。
管理会社に支払う手数料は「家賃×5〜10%」が一般的です。管理会社によって得手不得手があり、管理範囲も一定ではないので、どこまでが管理範囲なのかをしっかりと確認してください。
アパート管理費用についてはこちら>>手数料はいくら?アパート経営の管理費用と業務|自主管理には要注意
法人化費用
アパート経営は個人でスタートする人が多いですが、所得が800〜900万円を超えてきたら、ぜひ法人化を検討してください。
法人化のメリットはなんといっても、所得税を節税できることです。だいたい所得が900万円以上になると、個人の税率よりも法人の税率のほうが安くなります。
ただし、法人化のためには会社設立費用として約30万円。さらに法人税均等割や税理士報酬など、年間の維持費がおおよそ40〜50万円は必要です。
アパート法人化についてはこちら>>個人?法人?アパート経営を始める前にメリット・デメリットの把握が必須
まとめ
今回は「あぱたい」が、アパート経営に必要な費用について紹介しました。アパート経営で一番大きな出費は「土地購入費」と「建築費用」です。業者から必ず詳細な見積もりを提出してもらってください。
また、アパート経営をうまく回していくには「インターネット導入費用」や「管理会社費用」なども欠かせません。
自分のアパートに必要な費用をみきわめて、しっかりと資金を準備しましょう。