アパート経営をやめたい大家の正しいやめ方!立ち退き&売却マニュアル

「アパート経営をやめたい」と思ったら、まずなにをするべきでしょうか?
アパート経営は順調なのか? それとも赤字なのか? 経営状態で撤退方法は違ってきます。
今回の「あぱたい」は、アパート経営を「やめたい」と思ったときに、経営再生の可能性や物件をなるべく高く売却するには? 建物を解体するにあたって入居者の立ち退き交渉術など、アパート経営から撤退するために必要な情報を紹介します。
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アパート経営をやめたいのはこんなとき
アパート経営は入居者さえいれば定収入が入りつづける魅力的な投資です。
しかし、常に経営がうまくいくとは限りませんし、経営は順調でも年齢や体調などの理由でアパート経営をやめたくなるケースも出てくるでしょう。
このように大家都合でアパート経営をやめたいと思ったとき、まず、なにをすればよいのでしょうか?
アパート経営に失敗した・赤字物件を相続した
空室状態で収入はなくても、その部屋の維持、管理に一定の費用が発生します。さらに年に1回、固定資産税の支払いも発生します。そのためアパート経営が赤字であれば、経営を打ち切って売却するか、経営再生を目指すかの選択が必要です。
赤字のときは、一刻も早く物件を処分したくなるかもしれません。
しかし、まずは所有物件の築年数や立地条件などを検討して、再生できる可能性を探ってみましょう。
もし再生可能であれば安易に売却しては、みすみす損をすることもあるからです。
よく吟味し判断したうえで売却、という決断をしても遅くはありませんよ。
大家業をつづけるのが困難になった
大家の主な仕事は物件の管理ですが、大家自身の高齢化や病気などが理由で大家業をつづけることができなくなるケースがあります。
アパート経営を継続してくれる身内がいれば、そのままアパートを譲ればいいのですが、跡取りがいなければ売却を検討することになるでしょう。
土地・建物とも自己所有物件であれば、最適な売却時期を見計らうことでより利益が見込めます。
借地でアパート経営をしている場合は、地主さんに建物を買い取ってもらえないか交渉してみるのもおすすめです。
アパート経営に成功した場合など
アパート経営をやめたいと思うのは、経営難におちいったときだけではありません。逆にアパート経営が好調な状態で終わりにしたくなるケースもあります。
例えば所有しているアパート物件が購入時よりも高い金額で売却できるなら、出口戦略として理想的なタイミングになります。
入居者の減少で利益が下がり、アパート経営を順調につづけていく見通しが怪しくなったときに、相場よりも多少高い額で売却できるならアパート経営を打ち切るいい機会です。
アパート経営から撤退!?売却する前に再生できないか一考しよう
空き室率が高く、経営改善の兆しがみえない物件は、売却してアパート経営から撤退するのも選択肢のひとつ。
しかし売却する前に一度、経営再生できる可能性の再考をしませんか?
建物の築年数が浅め、好立地なら再生を検討
物件の立地は入居率に直結するといっても過言ではありません。
好立地の条件は、
- 駅から近い
- 近隣に学校や病院、商業施設がある
- 住環境がよい
上記の立地条件にあてはまる物件なら、経営再生の余地は十分あると考えられます。
立地はいいが建物が古くなってきて人気がない、という場合はリフォームをすることで客付けにつながります。
しかし立地もよく建物がキレイでも、管理状態が悪いと内見者に敬遠されることもあるのです。
例えば、建物の周囲にゴミや落ち葉などが目立つ、ゴミステーションが不潔など美観に問題があるとどうでしょう?
内見者は室内だけでなく共有スペースもチェックしています。こういった手入れの悪さは物件を選ぶうえでマイナス要因になります。
マイナス要因を取り除くには原因を調べて対策をたてましょう。
管理費を抑えた結果、業者の清掃回数が減ったことが原因であれば、管理費を投入し清掃の回数を増やせば解決します。
費用をかけたくないのであれば、大家がこまめに清掃をおこなってもいいでしょう。
このように、多少の費用や労力が必要でも建物全体の清潔感や美観が改善されれば、入居者に選ばれる物件に再生可能なのです。
なお、清掃業者に不満があるときは管理会社に申し入れ、改善されないようなら管理会社の変更を検討する、という選択肢もあります。
以下のような方法も新規入居者へのPRとなります。
- 不動産情報サイトでは物件の詳細を可能なかぎり記載し、できれば室内の動画も掲載する
- できるかぎり入居者の条件を飲む(その旨を情報サイトに記載する)
- 高齢者のみの入居を避ける物件が多いため、あえて高齢者の入居をOKにする
- 内見者を迎える前にエアコンをつけて室内を適温にしておく
- 成約時には入居祝いをプレゼントすると告知する(商品券、クオカードなど)
- フリーレント(一定期間は家賃無料)を活用する
売却するなら損をしないよう工夫する
検討した結果、再生は不可能、やはりアパート経営をやめると判断したら売却に向けて話を進めましょう。
どうせ売却するなら、なるべく好条件で売却したいですね。
売却額アップにつながるポイントは、
- フリーレント(一定期間は家賃無料)を駆使して入居者のいる状態で売却する
- 空き室には入念なハウスクリーニングを施す
- 引越しシーズン前に売却を開始すると好条件で売れやすい(1月、2月、9月がもっとも売れる時期)
- 売却実績が優秀な不動産業者に売却を依頼する
- ホームインスペクション(第三者の専門業者の物件調査)を実施し、物件の価値を把握しておく
土地も所有している場合は解体して更地にしたほうが売れやすいケースも
老朽化の激しい1棟アパートを土地も含めて所有しているのであれば、取り壊して更地にしたほうが好条件で売却できるケースもあります。
建物はまだ使えるとしても、現実問題として入居者がいなければ収入はなく、諸費用が発生するだけの赤字物件です。
古くて運用しにくい建物がのっている土地よりは、更地のほうが用途は広く、買い手がつきやすいのです。
アパート経営をやめたくてもやめられない場合の対策1:入居者がいる
更地にして売却することが決まれば、アパートを取り壊すにあたって居住中の入居者には退去してもらう必要があります。
では、どのような流れで退去をお願いすればいいのでしょうか?
退去勧告と立ち退き交渉のコツは早めの対応!
入居者は大家から立ち退き要求をされても、それが「正当事由」に該当しない場合は退去の義務がありません。
今回のように「大家が経営をやめたいから」の理由は正当事由と認められないことがほとんど。では、入居者に退去してもらうにはどうすればいいのでしょうか?
まず退去の1年~6ヵ月前までに「退去勧告」の通知を書面で出しましょう。そのうえで立ち退き交渉をおこないます。
立ち退き交渉のコツは、誠意ある対応で退去をお願いするのが基本。
例えば退去勧告を1年くらい前に出せばそれだけ入居者にも時間的な余裕が生まれるため、誠意が伝わりやすくなります。
そのあとも連絡を密にしながら、早めはやめに対応していくことで、入居者のスムーズな退去につながるのです。
そして、もうひとつ重要な交渉材料になるのが立ち退き料の提示です。
立ち退き料の提示について
立ち退き料の目安は、退去と引越しにかかる費用+迷惑料=賃料の6ヵ月~10ヵ月分。
正当事由のない退去勧告に入居者は応じる義務がありません。そのため入居者に退去をお願いするには、立ち退き料を提示して交渉するのが一般的。
多くの場合、退去を要求された入居者は次に住むアパートを探すことになり、お金がかかります。そこで立ち退き料を提示すれば、交渉はまとまりやすくなるでしょう。
なお立ち退き料は法律で金額などは決められていません。そのため交渉次第で金額は増減します。
また立ち退き料とは別に、早めに退去してくれたら現状の家賃をいくらか値引きしたり、最後の1ヵ月は無料にしたり、という交渉も有効です。
立ち退き交渉が難航した場合は……
立ち退き交渉はオーナーが誠意を持って、相手の要求は多少飲む形で交渉にあたることで速やかな退去へとつながります。
しかし、入居者によっては立ち退きを渋り、高額の立ち退き料を要求してくることも。
このように交渉が難航したら、不動産トラブルを得意とする弁護士を雇って交渉してもらう方法もあります。
弁護士は法知識が豊富という大きなメリットがあり、また、第三者が交渉するほうがなにかとスムーズになることも多いのです。
しかし弁護士への依頼は当然、費用がかかり、さらに交渉の間はアパート経営を継続する必要がある、などのデメリットも目立ちます。このため弁護士への依頼は最後の手段と考えておきましょう。
アパート経営をやめたくてもやめられない場合の対策2:売れない
所有するアパートを売却に出したとしても、「すぐには買い手がつかない」というケースもあります。
止むを得ず、アパート経営を継続するなら少しでも「欲しい」と思われる魅力的な物件になるように努力することが大切。
「欲しい」と思われる物件か再確認
どんなに優良物件でも目立たなければ内見希望者が増えず、なかなか売れないもの。
不動産の売却は基本的に、情報サイトや不動産屋で興味を持った購入希望者が内見し、気に入れば購入という流れになります。そのための内見希望者を増やすポイントがこちら!
- 売却価格は適正かどうか(早く売却したいなら安めに設定するのも一案)
- 国が定めた安全基準(耐震性など)である「安心R住宅」の認可を得ている
- 情報サイト用の写真撮影前にハウスクリーニングを入れる
- 不動産情報サイトに登録して詳細な情報を掲載する(画像が多く、室内動画もあるとなおよい)
ダメージを最小限にする方向を考える
アパートの空室が長くつづくと、ローン返済が家賃収入を上回ってしまう赤字決算もあります。
「いつか黒字になるかも」と期待する気持ちもわかりますが、ずるずると赤字をたれ流しつづけるようなら損切り覚悟で売却を決断すべきです。
厳しい選択かもしれませんが、ローン返済が滞り物件が競売になってしまう可能性を考えると結果として損切りが得になることもあります。
立ち退き料以外でアパート経営をやめるのにかかる費用は?
売却にかかる費用
譲渡所得税・住民税:不動産を売却して得た利益には「譲渡所得税(国税)」と「住民税(地方税)」が課税。
仲介手数料:不動産の売却は有資格の不動産業者にしかできないため、不動産業者の仲介は必須。
不動産登記抹消費用:司法書士に所有名義変更を依頼することで発生する手続き費用。
抵当権抹消費用:抵当権抹消手続きを司法書士に依頼すると、この費用が発生。(物件売却時にローンを完済した場合)
印紙代:不動産売買契約書を作成に必要。印紙代は以下のように不動産の売却金額で異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え1千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
*軽減税率は、平成26年4月1日から平成32年(2020年)3月31日までの間に作成される契約書が対象。
建物の取り壊しにかかる費用
建物の取り壊すときは、複数の業者に見積もりを出してもらい比較検討するのがおすすめです。
ちなみに取り壊し費用は必要経費として計上できます。
解体費用の相場は以下になります。(各一坪当たりの金額)
- 木造2階建て:3~4万円
- 木造3階建て:6~8万円
- 鉄筋2階建て:5~4.5万円
- 鉄筋3階建て:8~10万円
まとめ
アパート経営をやめたいと思ったら、できるだけ損が出ない撤退方法を考えましょう。
赤字のままずるずると経営をつづけて負債を増やすよりは、損切りをしたほうが結果的に得になる場合も多いのです。
状況によっては入居者に退去してもらわなくてはなりません。立ち退き交渉は、立ち退き料の提示とともに誠心誠意を持っておこなうことが、迅速かつ円満な退去につながります。
また売却時に発生する費用や税金について、よく理解しておくとよいでしょう。後悔しないアパート経営撤退を目指すなら、ぜひ本記事を参考にしてくださいね。
アパート経営をやめる手順について詳しく知りたいかたはこちら>>【アパート経営廃業マニュアル】やめる手順4ステップ!大家向け届出書や費用を解説