築年数の古いアパート経営が厳しい8つの現実【暴露】キャッシュフロー改善3つの裏ワザ

新築で取得したアパートがもうじき20年目、設備も古くなってきたし最近は満室にならない、この先どうしたらよいだろう?
不動産投資セミナーに参加して知識はある程度持てたが、実際に投資物件の購入となると新築では投資資金が足りない。築古のアパートを購入との考えもあるが、本当に古いアパートで大丈夫だろうか?
あなたもこのようなことで悩んでいるかも知れません。
アパート経営とアパートの築年数には密接な関係があります。
築年数が15年頃までの順調期、15年を過ぎて30年頃までの臨機応変な対応を迫られる変換期、そして30年を過ぎる頃の出口戦略が必要な成熟期。
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アパート経営は築年数につれてキャッシュフローが悪くなる8つの現実
アパート経営は時間が経過するとともに儲からなくなるビジネス。その現実をしっかりと認識することが不動産投資の出発点。
“時間が経過すると儲からなくなる” その理由はアパート築年数が古くなることによるキャッシュフローの減少。
1.キャッシュフロー(手残り)とは?
- キャッシュフロー:家賃収入から費用支出を差引いた手元に残るお金
- 利益:家賃収入から必要経費を差引いた残り
であり、必ずしも利益=手元に残ったお金とはなりません。
キャッシュフローと利益の違いをわかりやすくしたものが下表です。
キャッシュフロー計算 | ||
家賃収入 | 1000万円 | |
費用支出 | 800万円 | |
内訳 | 維持費など | 500万円 |
返済額 | 300万円 | |
キャッシュフロー | 200万円 | |
損益計算 | ||
家賃収入 | 1000万円 | |
必要経費 | 700万円 | |
内訳 | 維持費など | 500万円 |
減価償却費 | 100万円 | |
支払利子 | 100万円 | |
利 益 | 300万円 |
利益とキャッシュフローの違いは、家賃収入から差し引く「必要経費」と「費用支出」の違いです。
損益計算には「減価償却費」と借入返済の一部「支払利子」が、キャッシュフロー計算には「返済額」があります。
また借入返済は「元金+利子」の合計額ですが、税金の計算では利子分のみを経費に算入するので、利益とキャッシュフローの金額に違いが生まれます。
利益は実際に支出していない金額を含んで計算するので、 “利益が出ているのにどうして経営が苦しいのだろう” といった現象が起きてしまうのです。
2.利益は増えるがキャッシュフローが減る
アパートが古くなると利益とキャッシュフローがどのように変化するのか、シミュレーションしてみましょう。
【設定条件】
- 建物価格:4000万円(建物本体価格:3200万円、附属設備:800万円)
- 借入金:4000万円(金利:3%、返済年数25年)
- 年間収入:480万円(8戸×5万円)
- 経費:収入の15%
年次 | 1年目 | 16年目 | 23年目 |
---|---|---|---|
年間収入 | 480万円 | 440万円 | 400万円 |
経費 | 72万円 | 66万円 | 60万円 |
借入金返済 | 229万円 | 229万円 | 229万円 |
元金返済 | 109万円 | 170万円 | 210万円 |
金利返済 | 120万円 | 59万円 | 19万円 |
建物減価償却費 | 147万円 | 147万円 | 0万円 |
設備減価償却費 | 54万円 | 0万円 | 0万円 |
当期税引前利益 | 87万円 | 168万円 | 321万円 |
所得税率 | 5% | 5% | 10% |
所得税額 | 4万円 | 8万円 | 31万円 |
税引後キャッシュフロー | 175万円 | 137万円 | 80万円 |
「キャッシュフロー」が新築時よりも徐々に減っていき、16年目そして23年目には減りかたが大きくなります。
ここからはキャッシュフローが減っていく原因をひも解いていきます。
3.減価償却費が減っていく
建物や付属設備は年々価値が減っていきます。木造は22年で、付属設備は15年で取得した価格から一定額を「減価償却」し、23年目と16年目にそれぞれの価値が “0” になります。
下の図は5,000万円で購入したアパートを22年で償却した場合「減価償却費」が16年目と23年目にがくんと減る様子をグラフにしたものです。
「減価償却費」は不動産所得を算出する損益計算で損金に算入できる必要経費です。建物の減価償却できる期間は構造によって異なり、5,000万円で取得した建物の償却期間と償却額を構造別に記したのが下表。
木造 | 軽量鉄骨 | 重量鉄骨 | RC | |
---|---|---|---|---|
法定耐用年数 | 22 | 27 | 34 | 47 |
償却率 | 0.046 | 0.038 | 0.030 | 0.022 |
償却額 | 230万円 | 190万円 | 150万円 | 110万円 |
付属設備は建物の構造に関係なく15年で償却します。
上の利益は増えるがキャッシュフローが減るに掲載したシミュレーションで16年目と23年目に注目すると、16年目には付属設備の減価償却が “0” になり、23年目には建物の減価償却が “0” になっています。
減価償却が減ることによりキャッシュフローは悪化します。
4.借入金返済が進むと支払利子が減る
借入金の返済が進むと元金が減るため、支払利子が減ります。支払利子が下がっていくので損益計算で算入できる損金が減り、その結果利益が増えてしまうのです。
利益が増えると、キャッシュフローが減ることは次の税金(所得税)が増えるで説明します。
減価償却と共に損益計算で損金に算入できるのが「支払利子」。
アパート取得資金を銀行から借りると、返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。
- 元利均等返済:元金と利子の合計額が毎回同じ金額になる返済方法
- 元金均等返済:元金分の返済が毎回同じ金額になる返済方法
元利均等返済は毎回の返済額は一定ですが、元金の返済分は最初が少なく利子分は最初が高くなります。最初は多かった利子返済分が減っていき、逆に元金返済分が増えていきます。
元金均等返済は最初がもっとも高い返済額になり、徐々に返済額は下がります。利子返済が徐々に減っていき、利益が増えるのは元利均等返済と同じ。
5.税金(所得税)が増える
利益が増えると所得税が増えます。
キャッシュフローには「税引前」と「税引後」の2種類あり、税引前キャッシュフローから税金を差引いた金額が “税引後キャッシュフロー” 。
シミュレーション表をみてわかるように、23年目の税引後キャッシュフローは新築時よりも大きく下がっています。
不動産投資を節税目的でする人もいますが、アパートが古くなると節税効果が薄くなり、投資目的を考え直さなくてはならない時期がやってきます。
6.築16年と築23年はアパート経営のデッドクロス
デッドクロスになると、家賃収入から費用を支払うと赤字になり、自己資金を持ち出さなければならない状況におちいります。
デッドクロスとは、
- 税金よりも税引前キャッシュフローが下回る
- 元金返済分が減価償却費を上回る
ことで、 “順調にお金が回っていた状態からお金のない状態” に逆転すること。
付属設備の減価償却が終わる16年目と建物の減価償却が終わる23年目にデッドクロスが生じます。
7.広告費や修繕費が増える
修繕費の増加は利益の減少になるので税金は少なくなります。キャッシュフローも減少するのでオーナーさんにはつらいことです。
古くなったアパートは入居者を集めるのも苦労します。見栄えをよくするリフォームをしたり、広告宣伝費をかけたりしてもなかなか満室になりません。
10年~15年サイクルで湯沸かし器やエアコン設備などの交換時期がきます。新築から10年間は退去時の原状回復程度だった修繕費が10年過ぎると確実に増加。機器の交換を全戸同時におこなうような大きな出費も。
8.家賃収入も下がる
古いアパートにはさらにキャッシュフローを下げる要因があります。
家賃の値下げです。
今までは退去してもすぐ埋まっていたはずが、最近はなかなか埋まらないという現象が。原因は付近の新築物件と変わらない家賃設定。
築古アパートに共通する問題点をあげてみましょう。
- 家賃下落
- 空室率増加
- 空室期間の長期化
管理会社からは当然のように提案がきます。
- 家賃設定の見直し
- 大規模なリノベーション案
- 3ヶ月フリーレント案
年間収入が下がり、費用が増加する提案はキャッシュフローの悪化を招きます。
築古アパートでもキャッシュフローをよくする3つの裏ワザとは?
減価償却費や支払利子が減ってキャッシュフローが悪くなる “築古アパート” の経営を改善する、築古だからこそ使えるテクニックをご紹介します。
キャッシュフロー改善のポイントは3つ。
- 融資条件
- 安い価格で高利回りの物件
- 購入時の交渉で建物比率を高くする
1.融資条件
建築物の法定耐用年数は「減価償却」だけでなく、銀行の担保評価にも関係があります。築年数の古いアパートは銀行によって融資条件が大きく変わり、担保評価によって “返済年数” が変わるのです。
融資姿勢の厳しい銀行は返済最終期限=法定耐用年数とすることが多く、築22年を超えた木造アパートの融資はむずかしくなることも。
さらに、築22年以内のアパートでも返済年数をできるだけ短く設定してくるのが金融機関。返済期間によって毎月の返済額が変わり、キャッシュフローが変わってきます。
下表は4,000万円借りた場合の比較表ですが、返済期間による返済額の違いに注目してください。
返済期間 | 25年 | 15年 |
---|---|---|
年間収入 | 480万円 | 480万円 |
経費 | 72万円 | 72万円 |
返済額 | 230万円 | 335万円 |
元金返済 | 110万円 | 215万円 |
利子返済 | 120万円 | 120万円 |
建物減価償却費 | 147万円 | 147万円 |
設備減価償却費 | 54万円 | 54万円 |
当期税引前利益 | 87万円 | 87万円 |
所得税率 | 5% | 5% |
所得税額 | 4万円 | 4万円 |
税引後キャッシュフロー | 174万円 | 69万円 |
キャッシュフローの金額が大きく違うことにも注目してください。
(*シミュレーションの返済額は年1回払いの略算法で計算。初年度は25年と15年とで利子返済額は同じ。)
2.安い価格で高利回りの物件
割安な物件は利回りが高くなるので、減価償却の短い築古アパートはキャッシュフローを大きくすることが可能。
下表は築30年の木造アパートを購入した場合のシミュレーションですが、利回りによって手残り金額が大きく違います。
【設定条件】
- 物件価格:1000万円(建物価格:100万円、土地価格:900万円)
- 借入金:1000万円(金利:3%、返済年数10年)
- 年間収入:満室利回り20%、8%
- 経費:収入の15%
利回り | 20% | 8% |
---|---|---|
年間収入 | 200万円 | 80万円 |
経費 | 30万円 | 12万円 |
借入金返済 | 117万円 | 117万円 |
元金返済 | 87万円 | 87万円 |
金利返済 | 30万円 | 30万円 |
建物減価償却費 | 25万円 | 25万円 |
当期税引前利益 | 115万円 | 13万円 |
所得税率 | 5% | 5% |
所得税額 | 5.7万円 | 0.6万円 |
税引後キャッシュフロー | 47.3万円 | ▲49.6万円 |
3.購入時の交渉で建物比率を高くする
中古物件を購入するときに、キャッシュフローを高めるもうひとつの裏ワザが売買契約時の売買価格の内訳の振分けかたです。
契約書には土地と建物のそれぞれの価格を記載する欄があります。
土地と建物の振分けは「固定資産評価額」の比率によって売買価格を振り分けるのが一般的ですが、特約条項に振分け方法を記載することにより別に定めることができます。
建物価格が高いほうが減価償却費も高くなり、キャッシュフローを改善することが可能。
ただし売主には建物分の消費税が課税されるため、建物価格の割合を多くする振り分けかたは一般的な按分価格よりも売主の負担が増えます。双方でよく話し合って決めましょう。
築年数の古いアパート経営の出口戦略はケースごとに違う?
築30年を迎えるアパート、いよいよ出口戦略を考えなければなりません。冒頭に書いたように、この時期はアパート経営の成熟期。不動産投資が成功したのか失敗だったのかは、最後の出口戦略で決まります。
戦略を考えるうえで大切なのは、アパートが現在どのようなシチュエーションにあるのかということ。
- デッドクロスしている築古アパート
- ローン返済が終わった築古アパート
- 大規模修繕などの大きな費用がかかる築古アパート
ここでは3つのケースについて解説します。
デッドクロスしている築古アパート
減価償却が終わってデッドクロスしているアパートを所有しているなら、検討してみたい方法がふたつあります。
-
1.返済期間を延ばしてデッドクロスを解消
デッドクロスが生まれる要因のひとつ “返済額” を減らすと、キャッシュフローは改善できます。同一銀行での返済条件変更はむずかしいので、他銀行での借換ができるかどうかがカギ。
借換の審査は取得時よりもむずかしく、次のような健全経営をおこなっていることが重要視されます。
- 入居率が高い
- 滞納者がいない
- 長期の入居者が多い
- メンテナンスを定期的におこなっている
- 大規模修繕工事費用の積立をおこなっている
- 連帯保証人がいる
-
2.リノベーションを実施し減価償却費を増やす
住宅設備の交換や外装のリフォームなど大規模な工事は、減価償却が可能な資産の増加になります。アパートの仕様がグレードアップするので、家賃を上げることも可能に。
家賃収入と減価償却費の増加によってキャッシュフローの改善が期待できます。
借換には諸費用がかかりますし、返済額によっては思ったような効果が出ない場合もあります。リノベーションには大きな費用の支出がともなうため、手持ち残高は減少します。
あぱたい王子 どちらも綿密なシミュレーションをおこない、費用対効果をチェックするのが大切。
ローン返済が終わった築古アパート
ローン返済が終わっているアパート経営は、いちばん大きな費用の支出が終わったところですから、デッドクロスはありません。出口戦略を考えるうえでの深刻な要素は少ないといえます。
- 入居率が高く空室対策にあまり費用がかからない
- 細かな修繕費やリフォーム工事の必要性は当面ない
- 大規模修繕は数年前に終わっており今後おおきな支出予定はない
このような状態で利益も出ているようであれば、そのまま持ち続けてもいいでしょう。また、高めの金額で売却できそうであれば手放してもいいでしょう。
今後の空室対策には、Wi-Fi無料インターネット導入がおすすめです。
詳しくはこちら>>アパート経営に無料Wi-Fiインターネット【大家の感想付】宅建士が5つのポイントを解説
大規模修繕などの大きな費用がかかる築古アパート
劣化が激しく設備の交換や内外装にも大きな費用がかかりそうなアパート。空室が多くなっている傾向があるなら、現状のままで売却又は解体し更地にしたうえでの売却も選択肢です。
減価償却はとっくに終わっているし、ローンの返済も完了。さらに利益が出て納税しているなら、不動産投資の役目は終わった物件といえるでしょう。
まとめ
不動産投資をスポーツに例えると “マラソン” のようなもの。
単調に見えて実は起伏が多いのが「アパート経営」です。
16年目そして23年目には減価償却がなくなり税負担が増えます。
空室が目立つようになりいろいろ対策しても効果が出ない。苦しい時期をなんとかしのいで、アパートローンの返済が終わった解放感は、味わった者でなければわかりません。
そして、出口戦略を考えるのも不動産投資の楽しみのひとつ。リノベーションをして “サ高住” や “民泊” などへの活用もあります。解体して新しい物件に建替える選択肢もあれば、売却して立地条件のもっとよい物件に買い替えることも可能です。
あまり知られてないことですが、平成12年6月以降の木造建築は耐震性能や耐久性能において、それ以前とは大きな違いがあります。現在で言うと築18年ぐらいの木造アパートの中には、築60年ぐらいまで働いてくれそうな物件もあります。
古くなってもまだまだ使える収益物件。
アパートの築年数に応じた臨機応変の投資スタイルを試してみてください。
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