アパート経営の繰り上げ返済は得?損?メリット・デメリットと3つノウハウを解説

アパート経営をしているサラリーマン大家にとって、繰り上げ返済は「残高も減るし利息の節約にもなるし、お金があればどんどんやるべきじゃない?」と思っていませんか?
繰り上げ返済は、あなたのライフプランでベストなタイミングが違います。さらに状況によってはやらないほうがよい場合もあります。
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アパートローンの繰り上げ返済方法は2タイプ
繰り上げ返済には「全額繰り上げ返済」と「一部繰り上げ返済」があります。一部繰り上げ返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」のふたつがあります。
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期間短縮型
毎月の返済額はそのままで、返済期間を短縮するもの
繰り上げ返済をしない | 繰り上げ返済をする | |
毎月返済額 | 11万5941円 | 11万5941円 |
総返済額 | 4869万5220円 | 4792万2259円 |
残存返済期間 | 30年 | 28年9ヵ月 |
返済額軽減型
毎月の返済額を減らし、返済期間はそのまま
繰り上げ返済をしない | 繰り上げ返済をする | |
毎月返済額 | 11万5941円 | 11万2245円 |
総返済額 | 4869万5220円 | 4836万4660円 |
残存返済期間 | 30年 | 30年 |
一長一短、どちらも総返済額を減らすのは確か。では、選ぶ基準は何を重視すればよいのでしょうか?
どちらを選ぶべき?
「返済額軽減型」……家計に余裕を持たせるスタイル! 借り入れ期間にあなたのお子さんが中学・高校生の場合、当面の出費がかさむ状況を考え、毎月の返済額を減らす型。
「返済額軽減型」……近い将来のために蓄えるスタイル! まだお子さんが未就学児・小学生の小さいときの型。
「期間短縮型」……より早い完済を目指すスタイル! 余裕のある老後設計が可能。子供が成人してお金をかける必要がない、老後資金貯蓄などを優先したい型。
しかし、繰り上げ返済のメリット・デメリットを把握することを忘れてはいけません。
アパート経営における繰り上げ返済のメリット・デメリット
【メリット】
- アパートローンの総返済額が減らせる
- 金利変動によるリスクを軽減できる
【デメリット】
- 突発的な出費に対処できない
- 新たな不動産投資の機会を逃すこと
メリット①アパートローンの総返済額が減らせる
借入額、つまり利息を含めた総返済額を減らせる。繰り上げ返済をすると、その返済金額分の利息を払う必要がありません。とくに期間短縮型は総返済額も大幅に減らすことが可能。
メリット②金利変動によるリスクを軽減できる
繰り上げ返済をすると元金が減るので、変動金利により金利が上がった場合でも利息を減らすことが可能。
一般的に変動金利は金利が半年ごとに見直されるので、当然のことながら借入期間中に金利が上がる可能性もあります。そこで、その前に繰り上げ返済をしておきます。
デメリット① 突発的な出費に対処できない
手元のお金をある程度繰り上げ返済に充ててしまうと、予期せぬ出費に対応できなくなります。
たとえば、入居者退去による原状回復費、入居者を募集する広告費、災害などの突発的な修繕費など。
デメリット② 新たな不動産投資の機会を逃す
新たな不動産投資をしたい場合、手元のお金を繰り上げ返済に使ってしまうと購入資金をまかなえなくなります。また、お金がないために不動産購入の計画が不利に向く可能性もあり。
アパート経営戦略から考える3つの繰り上げ返済
繰り上げ返済をするかしないかの見極めは、今後あなたがどういうアパート経営をしていきたいかを考えます。
- 事業規模の拡大を目指す予定なら、繰り上げ返済はNG
- 物件を増やす予定がないなら、積極的に繰り上げ返済
- すでに複数の物件を持っている場合、繰り上げ返済をする順番は戦略を持って決める
1.事業規模の拡大を目指すなら繰り上げ返済はNG!
新たに不動産を購入して事業を拡大していくのであれば、不動産の購入資金を蓄えるまでしないほうがいいでしょう。デメリット①にも紹介したように、予期せぬ事態の出費に備えるためでもあります。
2.物件を増やさないなら積極的に繰り上げ返済
新たな不動産購入の予定がないのであれば、繰り上げ返済をして総返済額減少とともに利息を減らしましょう。そうすることでより早い完済が実現し、増収・増益を目指せます。
3.繰り上げ返済の順番は戦略を持って決める
不動産をいくつか持っている場合、「金利の高いローン」か、「借り入れてからまだ期間が浅く、かつ借入残高が高いもの」から繰り上げ返済していきましょう。
そうすることにより、完済した物件の収益をほかの不動産の繰り上げ返済に充てることが可能。そして、複数の不動産をあわせた最終的な支払額を減らすことができます。
なぜ返済の順番があるのか? のちほど「繰り上げ返済をするなら早い時期がオススメ」でさらにご説明します。
違約金で大赤字!?繰り上げ返済の注意点!
- 固定金利は繰り上げ返済できない
- 繰り上げ返済には手数料がかかる
固定金利は繰り上げ返済できない
アパートローンでは固定金利で繰り上げ返済ができません。もしした場合、損害金(違約金)が発生します。
損害金が設定されているかどうかは、借り入れた際の約定書に記載があるでしょう。損害金の内訳としては、繰り上げ返済をしたことによって銀行が失う利益(金利)を補うお金です。
【モデルケース】
- 借入金3000万円
- 35年固定金利
- 10年後に200万円の一部繰り上げ返済をした
りそな銀行の固定金利による繰り上げ返済の違約金の計算は、
対象元本金額×固定金利期間の残存年数×0.50%
参考:【りそな銀行】アパート・マンションローン繰上返済手数料に関するお知らせ
これを【モデルケース】に当てはめると
200万円×25×0.50%=25万円の違約金
繰り上げ返済には手数料が掛かる
繰り上げ返済をすると手数料がかかります。手数料の金額は融資を受けた銀行によってさまざま。
ネットバンキングで繰り上げ返済をおこなう場合、手数料はゼロなのですがアパートローンは金融機関窓口のみの手続きになるので結果的に手数料が必要です。
サラリーマン大家なら知らないとヤバイ3つの繰り上げ返済ノウハウ
- 繰り上げ返済手数料は確定申告で必要経費にできる
- 繰り上げ返済は増益&増税! 節税にはならない
- 繰り上げ返済をするなら早い時期がオススメ
1.繰り上げ返済手数料は確定申告で必要経費にできる
利息や繰り上げ返済手数料などの借り入れにかかった手数料は、経費として確定申告で計上できます。
2.繰り上げ返済は増益&増税! 節税にはならない
繰り上げ返済をすると借入金の元本が減るので利息も減ります。しかし、不動産所得は増えるのです。
不動産所得の計算は
不動産所得額=家賃収入額-必要経費 |
ちなみに借入金利息は必要経費にあたります。具体的な金額を出してみましょう。
借入金利息(必要経費) | 900万円 |
不動産所得 | 700万円 |
と仮定します。
繰り上げ返済をして借入金利息が900万円⇒800万円になった場合、借入金利息は100万円減。
しかし、不動産所得額の計算で算出すると、不動産所得は100万増。700万円から800万円になります。
借入金利息減 | 800万円 |
不動産所得増 | 800万円 |
また、不動産所得が上がれば、当然所得税も上がり増税となります。
3.繰り上げ返済をするなら早い時期がオススメ
下の表は借入額3000万円・元利均等・ボーナス返済なしで、100万円で期間短縮型繰り上げ返済をした場合の総返済額の減少額を表したものです。
金利 | 1年後 | 3年後 | 5年後 | 10年後 | 20年後 |
1.0% | 38万円 | 36万円 | 32万円 | 28万円 | 15万円 |
1.5% | 61万円 | 59万円 | 52万円 | 42万円 | 23万円 |
2.0% | 92万円 | 83万円 | 79万円 | 61万円 | 32万円 |
2.5% | 127万円 | 116万円 | 106万円 | 83万円 | 42万円 |
3.0% | 167万円 | 154万円 | 135万円 | 102万円 | 53万円 |
※千円単位四捨五入
まとまった金額ができたら、遅くともローン開始から10年後までには繰り上げ返済をするようにしましょう。
アパートローン完済後は抵当権抹消登記の手続きを
一般的にアパートローンを組む際、対象の不動産を担保に入れるために抵当権が設定されます。
そして、完済したとしても抵当権は自動的に抹消するわけではなく、自身で抵当権抹消登記をする必要があるのです。
ローンを完済し終わると、アパートローンを契約した金融機関から抵当権の抹消登記に必要な書類が送られてきます。
- 弁済証書または抵当権解除証明書
- 登記済証または登記識別情報
- 登記事項証明書
- 委任状
書類発送には多少時間がかかります。売却などによって完済日に抵当権抹消書類が必要な場合は、事前に金融機関に連絡しておかなければなりません。
上記の書類のほかに、法務局にある抵当権抹消登記申請書が必要です。抵当権抹消登記をする際は、完済したアパート物件を管轄する法務局を訪ねてください。
法務局のホームページでもダウンロードできます。Word、PDFどちらもありますよ。
手続きは郵送でも法務局の窓口でも可能です。
抵当権抹消登記をする場合、登録免許税がかかり、不動産1物件につき1000円。現金ではなく、収入印紙で支払います。
まとめ
今後のアパート経営を効率よく進めるためにも、繰り上げ返済を上手に活用していくポイントは
- いつまでに完済したいのか明確にする
- アパートローンを組んだら10年後までに繰り上げ返済をやる
- アパートローンは変動金利にする
- 自身の状況に合わせた繰り上げ返済をシミュレーションする
繰り上げ返済の目的は、ローン残高を減らすこと。
数年後のライフイベントや家計と照らし合わせたうえで繰り上げ返済を活用すれば、計画的な完済を目指せるでしょう。
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